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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)1581号 判決 1950年11月29日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人小杉彰の弁護人稻垣規一の上告趣意について。

新刑訴四一一条の規定は、所論のように上告申立の理由を定めたものではなく、上告裁判所が職権を以つて原判決を破棄し得る場合を規定したに過ぎないものであること、竝びに、量刑不当その他の事由を上告理由とするか否かは、憲法八一条の場合を除き諸般の事情を勘案して適宜決定せらるべき立法政策の問題であって、法律に一任されているものであることは夙に当法廷の判例とするところである。そして、刑訴応急措置法一三条二項及び刑訴施行法二条の規定は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地の如何を問わず何人に対しても等しく適用されるものであるから、憲法一四条に違反するところは毫も存しない。されば、新刑訴施行前に公訴提起のあった本件について新刑訴四一一条の適用があり、刑の量定の不当が上告の理由となることを前提とする所論は、前記刑訴施行法二条及び刑訴応急措置法一三条二項の規定により適法な上告理由となし難い。

被告人小川秀夫の上告趣意について。

所論は、衷心より後悔し、御寛大なる裁判を求めるというのである。それ故、当法律審適法の上訴理由ではない。

被告人小川秀夫の弁護人樫田忠美の上告趣意について。

量刑不当等を上告理由とするか否かは、憲法八一条の場合を除き、立法政策の問題であって、憲法の保障する基本的人権の問題でないこと、竝びに、憲法三七条にいわゆる公平な裁判所の裁判とは、裁判所の組織、構成が公平で偏頗の恐れがない裁判所の裁判を指し、裁判所の組織、構成の公平を保障せんとするに過ぎないものであることは、当法廷の判例の趣旨とするところである。されば刑訴施行法二条が「新法施行前に公訴の提起があった事件については、新法施行後も、なお旧法及び応急措置法による」と規定して、同措置法一三条二項により旧刑訴四一二条に基く量刑不当を上告理由とすることを許さないものとしても、憲法三七条その他同法の保障する基本的人権を害するものとすることはできない。また、刑訴四一一条は上告申立事由を定めたものではなく、職権をもって原判決を破棄し得る場合を規定したに過ぎないものであることも当法廷の判例とするところであり、且つ同条は、本件のような旧法事件に適用がないことは前記刑訴施行法二条により明らかであるから、所論量刑不当の主張は、本件では、上告適法の理由でないばかりでなく、職権発動を求める主張としても許容し難い。

被告人小川秀夫の弁護人草野豹一郎の上告趣意第一点について。

刑訴応急措置法一三条二項の規定は、同法一六条の規定と相俟って、上告審をして純然たる法律審とする趣旨であると解するを相当とするから、たゞに量刑不当乃至事実誤認等を上告理由とすることを許さないばかりでなく、上告審をして旧刑訴四三四条三項に基ずく職権調査の手続をも省かしめる立法趣旨であることも明白であるといわなければならない。されば、かゝる職権調査の権能あることを前提とする所論には賛同することができない。しかのみならず、仮に量刑不当乃至事実誤認等につき職権調査の権能を上告裁判所に認めながら、これを上告理由とすることを許さないものとしても、何等被告人の防御権を制限するといえない。されば、前記措置法一三条二項の規定を以つて被告人の防御権を制限する違憲の法律で無効であるとの所論は、是認することができない。

同第二点について。

所論量刑不当の主張は、前示措置法一三条二項の規定により適法な上告理由と認め難い。

同第三点について。

その理由のないことは、相弁護人の上告趣意に対する説明により了解すべきである。

よって旧刑訴四四六条に則り主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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